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対面では得られない「オンライン研修」のメリットと
現場で使えるマネジメント能力を育てる工夫

優秀なマネジメント人財を対面ではなくオンラインで育てるには?
コロナ禍が始まってからNTTデータアイでは、オンラインの特性を生かした人財育成の研修手法を探って、試行錯誤を繰り返してきました。その結果、対面と同等もしくはそれ以上の成果が得られたと実感しています。今回は、私たちが行ったオンライン研修の方法やメリットをご紹介します。

執筆者の顔写真

山田 隆司

技術本部
エグゼクティブプロジェクトマネージャ

目次

オンラインならではの特性を生かした
「マネジメント人財育成の場」

プロジェクトを成功に導くには、最新の技術や知識、リーダーシップなど、さまざまな能力を持った人財が重要になります。特に、テクノロジーの発展が著しい昨今ではシステム開発においても、より短期間に多くのニーズを高品質で実現し、提供していくためのマネジメント能力が求められるようになってきました。
時代によって必要とされる能力が変わりつつあるなか、NTTデータアイでは、講習やディスカッションを通じて、新しい時代、技術、開発手法に応じたマネジメント能力を高める研修に取り組んできました。
ところが突然のコロナ禍によって、以前のような「対面型の集合研修」が開催できなくなってしまったのです。そこで取り組んだのが、非対面でも実施可能なオンライン研修の改良でした。

「単純な学習ならまだしも、ディスカッションを多用する研修のオンライン実施なんて無理では?」

そんな声も聞こえてきましたが、自社の強みを活かした工夫を盛り込むことで、「対面研修と比べてもそん色がない」だけでなく、「オンラインならではの利点」を生かした、より効果の高い研修の開発を目指しました。この取り組みから生まれたのが、今回紹介する「マネジメント力強化研修」です。

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ZoomやTeamsを使って研修を進めていく様子

研修評価の迅速な共有と実践的な演習で、
受講者の「気づき」を促す

実際の開発現場では日々さまざまな課題が発生しており、チームを率いるマネージャには都度、適切な対応が求められます。そのため、マネジメント力強化研修では「現場で役立つ能力」を身に付けてもらうわけですが、「判断力を身に付けろ」「マネジメント力を高めろ」と言ったところで習得できるものではありません。

そこで、マネジメント力強化研修では、「受講者の成果物を講師が評価する」のではなく、「受講者本人による振り返りと受講者同士のフィードバックから生まれる、自分自身の気づき」を大切にしています。つまり、受講者間で感じたことを互いに話し合い、そこから得た「気づき」こそが、それぞれの成長、マネジメント力の強化につながると考えているからです。

また密なコミュニケーションを重視しているので、1回の研修に参加する受講者は10名程度に絞っています。参加対象となっているのは次世代のリーダーとして期待している課長代理クラスで、普段はプロジェクトマネージャをしている社員たちが中心です。このようにして2021年から始めたマネジメント力強化研修は、すでに延べ200名以上の社員が参加しています。

この研修は、3つのステップを踏みながら進んでいきます。1つ目は、現場で発生する課題を確認し、対策を講じる「演習」。2つ目はロールプレーイングによって、実際の現場での自分とは異なる立場で業務に取り組んだり、ディスカッションを経て他の受講者の考え方を学ぶ「議論」。そして3つ目が、研修を通して自らの働き方や、業務に対する気づきを得る「自己評価」です。

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マネジメント力強化研修のコンセプトは「現場で本当に使える研修」としている

マネジメント力強化研修は、2日間にわたって行われます。1日目は、日常的な業務で起こりうるさまざまな問題を解決していく「基礎演習編」。2日目には、高難易度のプロジェクトにおけるマネジメントの事例、ケーススタディを分析し、課題を抽出しながらプレゼンテーションを行う「分析発表編」に取り組みます。

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基礎演習編と分析発表編のカリキュラム

基礎演習編で行う「インバスケット演習」では、実際の開発現場で起こりうる問題が大量に発生する場面を体験してもらいます。受講者は、次から次へとやってくる問題に向き合い、対処していくことで「実践的、かつ臨場感のある体験」が得られます。

一方、分析発表編では、深く考えないと答えが出せないようなテーマに取り組んでもらいます。開発プロジェクト上の課題として用意されたテーマについて疑似ヒアリングを行い、自分なりに紐といたうえで、整理、分析し、改善のための対策内容をプレゼンテーションで発表します。受講者一人ひとりが違う答えを導き出すので、お互いにとって大きな刺激になっているようです。

この手法の狙いは、受講者が「自らの気付きに基づき、自ら成長していく」ことにあります。そして課題の中に、現場の事例や知見を盛り込んだ現実感のある演習を組み込むことで、「現場で本当に使える能力」の獲得につながることを期待しています。

「無理」を「できる」に変えた、
NTTデータアイの豊富なノウハウ

私が個人的に強く感じるマネジメント力強化研修のメリットは、「オンラインだからこそ得られるスピード感と利便性」です。

従来の対面型では、研修後の評価や受講者への回答を届けるまでに時間がかかっていましたが、すべてがオンラインで完結できるマネジメント力強化研修であれば、ほかの受講者からのコメントや比較データもすぐにフィードバックされます。これにより、「確かに、自分にはこういう傾向があったな」という気づきを素直に受け入れられるわけです。

とはいえ、これまで対面で行っていた研修をオンラインで行うことは、容易ではありませんでした。リアルな場であればタイミングよく教材を提供したり、作成物を回収できますが、オンラインとなればそうもいきません。そこで私たちが開発したのが、対面と比べてもそん色のないスムーズな進行を促すためのウェブシステム「専用研修管理システム」です。

これは、「研修に必要な教材提供」「成果物などの提出や受領」「受講者の各種ステータス」などを効率的に管理しつつ、研修のスムーズな進行支援を目的に開発されたものです。NTTデータアイの研修に対するノウハウが詰め込まれた専用研修管理システムであれば、一般的なオンライン研修で発生しがちな、「資料の配布や回収、課題の採点が困難」「出席管理などの研修運営が難しい」などの課題も発生せず、運営側の負担も軽くなります。また、それぞれの対話は汎用的なオンライン会議ツールを用いて行われるので、主催者や受講者の技術的・費用的ハードルも高くありません。

このシステムは、研修思想に賛同してくださった協力会社様とアジャイル開発し、研修での実運用を通じ、進化を続けています。

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オンライン研修のシステムやコンテンツを開発した工程表

対面研修では得難いメリットを、
今後も生み出していく

ほかにも、従来の対面型研修では得られないメリットが存在します。例えば、「忙しい社員でも参加が楽」「会場確保をはじめとした、さまざまな運用側の負担が減り、研修の回数が増やせる」「研修結果のフィードバックを記録し、共有財産として保存できる」といった要素は、オンラインならではのメリットと言えます。このようなポイントは受講者からの評価も高く、実際の研修内容に対しても「オンライン研修で、ここまで現実的でボリュームのある課題に対して協力しながら取り組めるとは思わなかった」との声も聞こえています。研修プログラムを作った人間としては、うれしい限りですね。

コロナ禍が去り、テレワーク化が当たり前になったことで見え始めた弊害も踏まえ、昨今では、対人的な交流を再開させようという動きもあります。研修も例外ではなく、今後は、対面型研修とオンライン研修が、それぞれのメリットを生かしながら共存していくのだと思います。

これまでNTTデータアイのプロジェクト・マネジメント人財の育成に取り組んできた私としても、マネジメント力強化研修には一定の成果を感じています。今後もオンラインならでは機能を成熟させるとともに、より質の高い研修コンテンツの開発を含め、充実した研修プログラムとしていきたいと考えています。そのうえで、自社のみならず、グループ会社や業態が類似している企業や団体に対しても提供できればと考えています。

NTTデータアイには、今回取り上げたように、社員育成を重要視する伝統があります。また、新しい取り組みを皆が協力し、楽しみながら進めて行こうとする文化があります。そして、それらを積極的に後押ししてくれる経営陣がいます。これが、今回の取り組みの原動力だったと感じています。

(本取り組みは『プロジェクトマネジメント学会誌 vol.24 No.2』へ寄稿した「ニューノーマル環境下での人材育成施策の工夫と取り組み事例」でも取り上げています)

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Profile

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山田 隆司

技術本部プロジェクトマネジメント部 統括部長
エグゼクティブプロジェクトマネージャ

NTTデータにて、主に政府系システムの開発に従事し、さまざまな大規模システム開発プロジェクトにてマネジメントを実践。2016より、NTTデータアイ、NTTデータ関西等の開発プロジェクトに参画。近年は、プロジェクトリスク審査、開発・運用人財育成など、開発力・運用力の強化に向けた全社指導に従事。2021より現職。